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イカツイ客のおっちゃんから教わった理想の親の在り方と生き方

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その客は、端的に言って、変だった。

 

プロレスラーのようなガタイに、店内に響くデカイ声。

 

このジューシーチキンってやつに惹かれて来たのな、と店員に話しかけ、だはは、と笑う。

 

イカツイし、忙しい従業員からしたらやたらと絡んでくる面倒くさい客。

 

なのに、どこか憎めない、妙な愛嬌のある人だった。

 

 

 

その日おれはカウンター席越しのキッチンで調理をしていた。

 

普段からそこで仕事する機会は多い。

 

が、客に近い場所にいるものの、注文以外で話しかけられることはほとんどない。

 

居酒屋なんてただでさえクソ忙しいのだから、話しかけられない方が正直都合は良い。

 

あえて忙しいオーラを出していることも多く、その日のおれもそれなりに忙しそうに見えていたと思う。

 

しかしその客はそんなことお構いなしに話しかけてきた。

 

「にいちゃん、年はいくつだ?25歳くらいか?」

 

話しかけられたことにまず驚いたし、年齢をピタリと当てられたことに更に驚いた。

 

忙しいオーラなんて吹っ飛んで思わず、そうです、どうしてわかったんですか、と答えてしまった。

 

今思えばその瞬間からおっちゃんに只ならぬものを感じ、興味を抱いてしまっていたんだと思う。

 

おっちゃんはジョッキのビールをものの数秒で飲み干し、いきなり

 

若いんだから挑戦して自分の商売をするんだ、

 

とおれに向かって言い出した。

 

呆気にとられるおれに、その方が絶対楽しいぞ、と言い放ち、そうしてまた、だはは、と豪快に笑うのだった。

 

 

 

おれは仕事中にも関わらず、その後小一時間おっちゃんと話し込んでしまった。

 

「にいちゃん、失敗はするんよ、挑戦しとれば。

 

失敗しないやつの人生には、何も起きない。

 

楽しく生きるってことを起こしたかったら、挑戦すればいいってことよ、

 

失敗なんてしないほうがおかしいんだ。」

 

「商売なんてゲームよ。

 

ゲームと同じで、何回でもチャレンジできるし、その度にうまくなってく。

 

難しく考えたってしんどくなるだけだ。

 

そういう意味では人生だってゲームだ。

 

リアル人生ゲームな、だはは」

 

そんなことをいろんな経験を踏まえておっちゃんは語ってくれた。

 

 

 

その中で、親の在り方について、話が及んだ。

 

「子どもが二人いるんだ。

 

おれはいつも子どもたちに、好きなことをやれ、好きに生きろ、って言ってる。

 

そしておれはおれの好きなように生きている。

 

好きなことをして楽しく生きてる。

 

よく、子どものために我慢して、なんて言ってるやつがいるが、

 

親が子どもに対して

 

おれはこんなに苦労してお前に人生を捧げているんだ、

 

なんてことは絶対言うべきじゃないし、そういう態度もとるべきじゃない。

 

だって、そんなにおれにプレッシャーかけないでくれよ、って子どもは泣きたくなるだろう。

 

親が楽しく生きてるのを見せてたらいいんだ。

 

血は繋がっているけど、別個の人間、アカの他人。

 

おれは好きに生きる。

 

そして子どもも好きに生きたら良い。

 

その方がお互い絶対楽しいぞ。」

 

何度目かわからない、だはは、を聞きながら

 

親の立場でこれを言うことがどんなに難しいか、と思った。

 

本当の意味での親の立場というものは今のおれには想像しか出来ない。

 

ただ、好きに生きろ、と理屈でいうのは簡単かもしれないが、本心で言うのはものすごく難しいんじゃないか、ということはわかるような気がする。

 

それは、自身が本当に自分の思うがままに生きてきて、いろんな困難があったとしても、それでも自分の選択を後悔していない、ということを身をもって納得していないと、嘘くさくなってしまうものだと思う。

 

こんなにもハッキリと自信と説得力を持って口に出す大人は初めて見た。

 

 

 

閉店間際まで居座った挙句、また来るな!と言い残し、おっちゃんはニカッと笑って夜の街に消えていった。

 

その後、溜まりに溜まった仕事に死にそうになったのは言うまでもない。

 

しかし、その忙しさ以上に、心の中は爽やかだった。

 

こんな人間が実際にいるのだ、という感覚は、希望だ。

 

なんとかその希望を脳みそに染み込ませたくて、何度も何度も反芻した。

 

またいつか、あのおっちゃんに会えたときは、

 

自分の挑戦を胸を張って言えたらいいな、と思う。

 

 

 

そんな夜もあるから、人生は面白い。