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自分には価値がないと思うなら、手を止めてちょっと話を聞いて欲しい。

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人間は一人一人に価値があるんだよ、的な言い回しは
 
なんだかんだで、生きていると結構耳にする機会もある。
 
でもどれだけそういうことを言われたところで、なんだか納得できなかった、ずっと。
 
そんなこと全然分かんねえじゃん、なんでそうやって言い切れんだよ、おれだけは別かもしれねーじゃんか、
 
ふつーにそう思っていた。
 
まあだってそうでしょ。
 
むしろ価値がないと思い知らされる出来事の方が多いわけだから。
 
自分の価値を疑うしかないような、そんな消し去ることすらできない苦しさを積み重ねてきたのだから。
 
だからそんなの一言言われたぐらいで信じられるわけねーじゃねーか。
 
偽善者ぶった大人ほど価値があるさとか平気で言うものだから、なおさら信じられるはずもなかった。
 
 
 
しかしやっぱり本当は価値があるんだ、とどこかでは信じたかった。
 
だから何か証明が欲しかった。
 
大人になる過程で、その証明を探し求めてきた。
 
そんな中疑問だったのは、
 
そもそも本当に価値がない人間がいるとして、それは一体どんな人間なのだろうか、
 
ということだ。
 
おれはそんな疑問を考えるたび、思い浮かべるものがある。クローンだ。
 
全く同じことをして、全く同じ格好で、全く同じ経験を積み、全く同じことを考える。
 
そんな人間がいるとすれば、そのうちのどちらかには価値がないのかもな、なんて思うのだ。
 
クローンのことをよく知らないが、そんなことをどうも思い浮かべてしまうのだ。
 
 
 
じゃあ果たしてそんな人は実際いるだろうか。
 
どんな人間であっても、その人はその人にしかないバックグラウンドを持っていて、その人にしかない感覚とか経験を積み重ねてきたはずだ。
 
今まで生きてきた人生は、どこかの誰かと全く同じで、全く同じことを考えてきた、なんて人はいないだろう。
 
だからそうなのではない限り、それはつまり、その人にはその人にしかない、人生の組み合わせを重ねながら生きてきたということだ。
 
人生が、たくさんのカケラで出来ているとして、
 
誰もがその人だけの、人生のカケラの組み合わせ、的なもので出来ているはずなのだ。
 
それは絶対に70億人の人類で、70億通りのものだ。
 
全く同じ構成要素で出来た人生なんて絶対にない。
 
そうであれば、その人にしか言えない言葉があり、その人にしか伝えられない思いがあり、その人でしか感動させられない人が必ずいる。
 
その人にしか伝えられない何かは、その人にしか伝えられない誰かに届く。
 
そこにはどうにもまぎれもない価値があるように思われるのだ。
 
「自分だけの組み合わせを作れるから、人には価値がある。」
 
これが人間には一人一人に価値があるという言葉の本当のところなんじゃないか、と思うのだ。
 
 
 
24歳の若造が何を言っているんだと言われればそれまでなのだが、
 
しかしおれにはおれにしか伝えられないものがあり、おれにしか伝えられない人がいると信じて、書いてみた。
 
そんなことを考えながら、無価値に思えても明日を生きていきたいと思う。