優等生、と言われて生きてきた。
ユウトウセイ。ユウトウセイ。ユウトウセイ。
それがたまらなく嫌で、部屋で一人嫌悪感で震えていた。
優等生、真面目、良い子、優秀、賢い、しっかりしている
そんな言葉を浴びるたびに、虫酸が走った。
吐き気がした。
どうしておれを見てくれないのだ、とずっと思っていた。
大人は誰一人おれを見てくれない。
勉強が出来る子、としてしかおれを見てくれなかった。
その裏には、でも勉強しかないねとでも言いたげな感情がちらちらと見え隠れしていた。
それに気づかないとでも思われていたのだろうか。
その浅はかさに全身の内蔵がむかついた。
勉強に全てを賭けてるのに、勉強に全てを奪われている気がした。
そんな苛立ちをずっと抱えていた。
一方で同時に、優等生と言われることにある種の快感のようなものも感じていた。
優等生と言われることが唯一のアイデンティティだった。
だからそれすら失ってしまったら自分には何も無くなってしまう。
優等生じゃないおれは誰からも見向きされなくなってしまう。
そんな恐怖に怯え、結局は勉強に逃げ込んでいた。
なんとか勉強が出来る優等生にならないと、嫌われてしまう。
それは10代のおれには、あまりにも恐ろしかった。
だから勉強が憎くて仕方なかったのに勉強を続けた。
当時は勉強への憎しみにも気付かぬほど、自分の感情がわからなくなっていた。
勉強なんて楽しくなかったのに、本当は友達と遊びたかったのに、もっと外の世界を知りたかったのに、勉強をすることしか知らなかった。
そこにあるのは怒りというよりも悲しみであり、無力感だった。
優等生と言われるのはむかつくけど、優等生じゃない自分に一体何が残るのか。
探し求めた答えを、少し吐き出す。
ゲロのように撒き散らす。